11:我々だ側視点 ページ11
会場に到着し、三人が馬車から降りる
御者の役割をしている白い男は”ひとらん”とグルッペンに呼ばれた
「少し長くなるかもしれないが、どうする?ついてくるか?」
少しばかり悩んでからひとらんは緩く頭を振って
そして、口を開く
「ここで外道丸と待ってる」
赤いバッテンマークがされたマスクによって顔の半分が隠されているが、少し苦しげな顔だ
優しい奴だ、人の売買がされているところをあまり見たくないのだろう
グルッペンはそう感じて、ひとらんの返事に頷いた後、ボディーガードの役割も含めた付添人の青色とと藤色をそれぞれ”鬱””ショッピ”と呼びかけた
「行くぞ。馬車に何も置き忘れてないだろうな」
「大丈夫やでグルッペン」
答えたのは青色の”鬱”と呼ばれた男で、その発言に同調するように気だるげに首肯したのは藤色の”ショッピ”と呼ばれた男であった
肩に掛けた真っ黒なコートをひるがえしながらグルッペンは無機質な建物へと歩んでいく
そのすぐ後ろに二人はついて、ヘラヘラとしながらも辺りの警戒は怠っていなかった
入り口にいた開催者の仲間であろう人にグルッペンは招待状を見せて、人買いが目的であることを示すように、つま先で二回、かかとで一回床を蹴って音を鳴らす
了承の意を入り口の者から受け取り、また別の人間から人売りの会場へと案内される
人売りの会場はまるで映画館のような場所で、スクリーンがあるだろう場所はステージとなっており、その端に巨大なスクリーンがあるからライブ会場と言った方が正しいかもしれない
マイクと番号の書かれている名札が置かれた机
三人は質の良さそうな椅子に腰掛けた
「気になってたんすけど」
案内人が声の届かぬ場所へ行ったのを見計らって、ショッピが声を潜めながらグルッペンに訊ねた
「何でわざわざオークションなんすか。メイド雇用の広告でも出しとけば良かったんじゃ?」
「……ま、それだと定期的に給与を与えねばならんことが面倒だったと言うのもあるし、それだと不届き者がやってくる可能性が万が一でもあり得た。大先生は別にいいが、普段良い働きをしているショッピの要望には中々応えれそうになかったから、というのもある」
「グルさん…」
扱いひどない?と思う”大先生”とあだ名で呼ばれた青色であったがその時は何も言わなかった
「だが、ついでの用事もある」
「ついで?」
問い返したショッピにグルッペンはギザギザの歯を見せた邪悪な笑みを浮かべた
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時