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何度も何度も見たことのある、自分の体内から逃げ出した体液の色を思い起こされる

そんな赤色の瞳が上下にゆっくりと動いて、こっちの方を見ている

癪に障ったのだろうか。
入れと言われたがちゃんと自分の身分を理解していることを示すように外で待機する、という意思を見せなければいけなかったのか?

なんで、どうしてこっちを見てる

喉がどうしてだか閉まるような感覚がして、入ってくる空気が少ない

ゆっくりと開いた主人の口

「歩けるか?」

発せられた声色は、異常なほどに柔らかくて、優しかった

「あ……ぇ、ある、けます」
「そうか。なら、ひとまず医務室に向かうぞ」

すぐ近くだからな、と主人は言って玄関を抜けたすぐ右正面を向いた

そんなに遠くない距離で、近づけばドア横の壁のプレートに【医務室】と書かれてある

王宮でも軍の要塞でも無い場所で医務室があるのはすごく違和感のように思えたけど

なんか、世界的に有名な名前って本人も言ってたし専属の医者がいてもまぁおかしくはねぇのか…?

がらりと開かれた戸の先には、顔全体を覆い隠す布の面に”神”と書かれたものを着用してる、全体的に薄い水色っぽい人がいた

「おかえり〜。……あれ、女の子を探してるんじゃなかったの?」
「あぁ、本来の目的だった少女は見つけて、ちゃんと手に入れたさ。今、ショッピの腕の中で寝てる」

寝てる?

衝撃的すぎて後ろを振り向けば、主人が言ったとおりあの死んだ目は瞼に隠されていて、すやすやと眠ってやがる

無礼すぎるような気もしたが、お姫様抱っこをしているショッピ様はどこか嬉しそうな雰囲気で

もしかして、本当にエニスを…

衝撃を受けている自分を「これが俺達商品の人生なんだ」と言い聞かせた

「エニスと言う小娘がこいつのことも連れて行けと言ったからな」
「へ〜、グルッペンにしては優しいね」
「”にしては”ってなんだ」
「まあまあ」

この医者…?は、なんだかふわふわした人だ

この雰囲気に、先程までうまく吸えていなかった息がしやすくなって

鼻をかすめた消毒液の匂いに、思わず息を止めた

主人を激しく怒らせた同じ立場の女が、火をつけられていた事を今になって鮮明に思い出す

まだガキの頃で、エニスじゃなくて大人の女があそこにはいた

主人がつけた火に苦しむ姿を見て「可哀想に」なんて言葉を吐いて、バケツいっぱいの消毒液をぶっかけた

激しく燃える炎に呼応するように轟く悲鳴

あの時の科学的な匂いが忘れられなかったんだ

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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta  
作成日時:2024年3月20日 2時

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