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「おはようエニス。」
「おはよう……えっと…」
目線を上に移動させて少し考える素振りをして
はっと思い出したようで、エニスはすっきりしたような顔をしながら医者を指さした
「ペ神、ね。あなた」
「そーそー、覚えててえらいね〜」
医者が伸ばした手は優しくエニスの髪の毛に触れて、左右に動かして頭を撫でた
撫でられたことか、それとも褒められたことが嬉しいのか、俺の鎖を壊したときに見せたようなドヤ顔をエニスはしていた
「でも、人を指差すのはアカンよ」
「そうかしら?」
「うん。誰にでも失礼なことやからね」
「そうなのね…」
「もうやっちゃ駄目やで?」
「えぇ、もうやらないわ」
「ん、えらい子」
んじゃ、食堂に行こか。
そう言って医者は立ち上がった
医者の後ろにエニスと一緒について行き、色々と説明してくれているその話に耳を傾けた
エニスはくるくると髪の毛をイジっていたから、ちゃんと聞いてるかは怪しいが
「朝はそれぞれプライベートの仕事だったりがある奴らもいるから、朝食は基本みんなバラバラなんよ。
毎日ひとらんがおにぎりとかサンドイッチとかを大量に作って大皿に置いてくれてるから。だから2人も好きなだけ食べや〜」
他にも色々と、屋敷の人達の仕事の時間帯とかについて話していた
朝か夜に仕事に行く人か、あまり仕事で外に行かない人、で二分化されているみてぇで、
フューラー様やトントン様、ひとらんらん様は大体屋敷に残っていることが多いらしい
食堂に入れば、昨日の夜の人がいっぱいの印象が強かったからなのか、朝の今は随分と寂しげな感じだった
長机には二枚の大皿に何種類かのサンドイッチが並べられていた
既に何人かが朝ご飯をすましたのか、ラップがかけられている
「あ、もうこんな時間なんか…」
医者が奥の柱時計に目をやってそんなことを呟く。
「俺はもう仕事に行かないとだから、分からんことがあったらトントンに聞くんやで」
「分かったわ」
2つほどサンドイッチを持って、こちらに手を振りながら食堂の扉を閉めた
食堂に案内されたってことは、食事をとれ、と言うことだろうか
本当に?
勝手な行動とみなされて、主人達の癪に障らないだろうか
良いのか悪いのかが分かんなくて、立ちすくんでいたら
くい、とエニスに服の裾を引っ張られる
「いっしょに、食べましょう」
そんなことを言うエニスは、どうしてだか
随分と優しげな笑みを浮かべている
そんな風に、見えただけなのかもしれねぇが
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時