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昨日と同じようにエニスは俺の隣に座っている。
食堂には他に誰かがいる様子は無く、キッチンの方からも何の物音一つも無い
柱時計の振り子が揺れる重い音だけが、唯一の雑音だ
「いただきます」
隣で手を合わせてエニスがそう言った
昨日はその行為に戸惑っていたようだったから、こいつのところは食事前では命にではなく、神様に感謝するのが当たり前だったんだろう……多分
順応性が高いのかなんなのか……
エニスを見ていたのに気づいたのか、目の前のそいつと目が合って、更には謎のドヤ顔をされる
「しってる?”いただきます”は神様じゃなくて、生き物の命にかんしゃするのよ。
きょくとう…?の国の”ならわし”だそうよ」
「あっそ…………どこで知ったんだ?そんなこと」
「きのうね、ショッピとチーノが本を読むかわりに色々おしえてくれたのよ」
エニスは大皿の方に手を伸ばして、サンドイッチを1つ手に取った
パッと見た感じキュウリとハムが挟んであるような感じの、一般家庭でよくでる具だ
前世のときも、朝食に出ることは無かったけど、休日の昼食に母さんがよく作ってたなぁ
なんてことを、何となく思い出した
一口を頬張って、美味しかったのかエニスは嬉しそうにしている
会話をすることに飽きたのか、サンドイッチに夢中になったのか、2つ目、3つ目とお上品に食べ進めた
目線をエニスから、テーブルの方へと向ける
二枚の大皿に乗ってるサンドイッチの量は、わざわざ2皿も必要ない、と思えるくらいだから大分の量が胃の中に入ったのだろうな
食堂には誰もおらず、誰かが来る気配も無いから
きっと俺達が最後なんだろう
本当に、食べていいんだろうか
きっと”食べてもいい”という選択肢が与えられている、んだと思う
でも、手を伸ばす勇気というか度胸というか、そんな怖いもの知らずな心は持ち合わせてねぇ
……別に食べなくたって、今までそれでも平気だったしな
罰を受けそうな行動をとるよりかは、マシだろう
「アル」
急に隣から名前を呼ばれた
そっちを向けば、こてん、と首を傾げる可愛らしい動作をしていながらも、表情が全く可愛げの無いエニスと目が合う
「食べないの?」
その問いにどう答えればいいのかは、俺には分かんねぇ
ただ、次の瞬間にハッとした顔をして口元を手で隠して笑いを堪え始めたエニスに対して、嫌な予感がした
「…ぷぷぷ、そうね、歯みがきもできないならサンドイッチの食べ方も、わからないわよね」
ほらやっぱり
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時