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49:我々だ側視点 ページ49

エニスは非情に困惑していた

もしかしたら彼女にとってはこれが初めての”困惑”
という体験だったのかもしれない

サンドイッチを食べさせていたアルがいきなり泣いてしまったのだ

その時は、おいしくて泣いてるのかな、と思ってエニスも普通の情緒で接していた

けれど、いつまで経っても泣き止まない

ハンカチで拭いてもすぐに彼の頬は濡れてしまうし、サンドイッチを差し出しても泣くばかり

最初は静かに泣いていたはずなのに、段々と嗚咽が出るようになって

ついには口に頬張ることをせず、ただ泣き始めてしまった

泣いた人を泣き止ませるなんて、エニスはそんなことをしたことがなかった

アルの手にはサンドイッチが無いから

だからと差し出しても、気づいてないのかさっきのようには受け取らなかった

エニスなりに言葉をかけてみようとするが何を言えばいいのか分からなくて

アルの泣いてる姿を見ている内に、エニスも更にどうすればいいのかが分からなくなって

ついには彼女もべそをかき始めてしまった

それでも、私は飼い主なんだから、とどうにかしようとぐちゃぐちゃの頭で考えていると

”分からんことがあったらトントンに聞くんやで”

先程のしんぺい神の言葉を思い出した

でも、そのトントンがどこにいるのかが分からない

そこで更にハッと閃いて、食堂のドアを頑張って彼女は顔が出せるほどの隙間を開けて

「トントーン!!」

普段は絶対に出さない程の大きな声で、頼るといいと言われた人物の名前を叫んだ

反応は思いのほか早く

走る音が一瞬で近づいてきたかと思えば、エニスの全力で頭ひとつ分しか開かなかった扉を
駆けつけた彼はいともたやすく開け放った

「どうした!ショッピになんかやられたんか!?」

開けてすぐ目の前にいた、叫んだ張本人を見つけて

泣いていることに気がついて、トントンの頭の中でよぎったのはショッピの顔であった

青ざめた表情でエニスの肩を掴み、安否を心配する

エニスは首を振ってアルを指差そうとしたときに”もうしない”と、しんぺい神と約束したことを思い出したので、顔をそっちの方に向けた

トントンが彼女の向いた方向を見てみれば、何故か大泣きのアル

恐らくトントンには気づいていない様子だった

「アルが泣いちゃって……、どうしたらいいのか分からなくて、だから、だからぁ……っ」

話したら涙腺がついに崩壊したのか、彼女も本格的につられて泣き始めてしまった。

50:〃→←48



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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta  
作成日時:2024年3月20日 2時

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